今頃になって

トヨタがQC活動に対して残業代を支払うという。


 トヨタが始めたというQC活動に、カイゼン。もう20年前の話だが、私もこの2つを体験した。当時、ある半導体メーカーに勤めていたが、両方とも導入されていた。


 この2つを、日本製品の優秀さを支えるシステムだと、肯定的に捉えている人も多いだろう。だが、実際に体験した人間から見ると、違う。まず、カイゼン。たとえば、中学・高校で、わけのわからない校則に苦しんだ人は、少なくないだろう。そのような校則をさらにひどくしたのが、カイゼンだと思っていい。1週間に1件、作業着のたたみ方だとか、道具の置き方だとかをカイゼンして、報告するのがノルマになる。達成できないと、さんざん上司から罵倒される。そうこうする内に、決まりごとがどんどん増えていって、作業は緊張感に満ちたものになる。だからといって、1週間に1件のノルマがなくなるわけではないし、「もうありません」と答えることは絶対に許されない。ノルマは退職するまで続く。これは、校則よりもたちが悪い。校則はそう頻繁に増えたりしないのだから。拷問に近い、と言ってもいい。
 おかげで職場の人間関係は最悪で、会社の駐車場に停めておいた車にキズがつけられる、という事件が多発していた。QC活動でも、発表の時だけ立派なことを言っているが、裏ではみんなでいつ辞めるか話し合っている、というのが実態だったし、実際、辞めていく社員は多かった。500人くらいの社員がいて、多い月だと10人くらい、少ない月でも5人くらいが辞めていった。私も、8ヶ月くらいでおさらばしたけどね。今、あの会社はどうなっているか。あれから何件のカイゼンが実行されたのか。今でも人間が働いているのか。怖くて、調べる気にもなれないね。


 QC活動やカイゼンは、本当に品質管理に役立っているのだろうか。トヨタがいまだに数万台規模のリコールを出すことがあるのは、どうしてなのか。これらの制度の本当の目的は、社員をふるいにかけることにあるのではないか。社員が全員勤続を重ねていったのでは、人件費が増え過ぎて困る。だから、一定の割合の社員に辞めてもらうために、絶えずプレッシャーをかけ続ける、というのが、この2つの制度の真の意味なのではないか。