に関する議論さえ許されないのか、と言う人たちがいる。議論の末に核保有派が勝ったら、日本は核武装するのだろう。


 核兵器を持つとして、どこで核実験をやるつもりなのだろう。兵器には、理論だけではなく、実証が必要だ。特に核兵器の場合、核実験を大々的に行ってその存在を世界にアピールし、敵国に恐怖感を与える必要がある。そして、核ミサイルの発射基地はどこに?喜んで受け入れる自治体があるだろうか。あるいは、核ミサイルを搭載する潜水艦部隊を創設するのだろうか。これらの問題をクリアして実際に核兵器保有するまでに、どれくらいの費用と時間がかかるだろう。
 
 そもそも、日本が一から独自に核兵器を開発するのは無駄が大きすぎるし、敵国になめられることになる。核抑止が成立するには、もし先制攻撃を仕掛けたら確実に報復攻撃を受けて共倒れになるという共通認識が、自国と敵国との間にあることが絶対条件になる。技術的に少しでも不安定な要素があると、もしかしたら先制攻撃を仕掛けた方が得かもしれない、と敵国に思われて、核戦争を誘発する結果になる。結局、核兵器を持つにしても、アメリカに全面的に頼ることになるだろう。


 核兵器を持つことによって、「平和ボケ」が「核による平和ボケ」に変わってしまわないか、心配だ。核兵器があるからといって、安全が完璧に保障されるわけではない。核兵器をひそかに保有していると思われるイスラエルは、ヒズボラのロケット弾攻撃を止められなかった。インドとパキスタンは両方とも核保有国だが、軍事的な衝突は日常茶飯事だ。そして、アメリカは同時多発テロを防げなかった。

 
 日本が核兵器を持つ日、NHKのアナウンサーはこう言うだろう。「本日、日本初の核ミサイルが、自衛隊に配備されました。ヒロシマ型原爆○発分に相当する破壊力を持つ核弾頭が搭載されています」。ブラック・ユーモアが、現実になるかもしれない。