ちょっと前まで


話題になっていた「モンスター・ペアレンツ」という単語が、あまり聞かれなくなった。だが、彼らは決して「絶滅」したわけではないだろう。


 哲学者の内田樹氏によると、子供の頃から「お客様(消費者)」としてさんざん甘やかされてきた人たちが、「モンスター・ペアレンツ」になるんだという。だが、彼らは「お客様(消費者)」としてのみ生きているわけではない。いうまでもなく、彼らは消費者であると同時に生産者であったり、サービスの提供者であったりするわけで、そうして稼いだ金で消費を行っているのだ。


 彼らの仕事のあり方が、消費のあり方(私生活のあり方)に影響している、とは考えられないだろうか。たとえば、この間話題になったキャノン電子という会社がある。この会社にはイスがなく、廊下も一定以上のスピードで移動しなければならないそうだ。これらは効率化を追求する、いわゆる「カイゼン」の結果であり、程度の差こそあれ相当な数の有名企業に共通して見られる決まりごとだ。そのような企業の従業員は、どんな私生活を送っているのだろうか。


 会社で緊張感漲る生活をしているので、私生活はルーズに、穏やかに過ごしたい、と考える人もいるだろう。だが、中には会社におけるのと同様の「効率化」を、私生活でも求める人もいるのではないだろうか。彼らは、自分の会社と比べて非効率的と思える学校や役所のあり方に、我慢できない。いわゆる「理不尽な要求」は、彼らから見ると当然の「カイゼン要求」なのだ。


 ・・・これは、私の推測だ。「『カイゼン』が企業の外の一般社会に及ぼす影響」というのは、なかなか興味深い研究テーマだと思うのだが、どうだろう。