イランの

麻薬密売組織に誘拐されていた日本人大学生が、解放された。


 イラクで日本人の人質が解放された時と同様、自己責任論が語られている。交渉のためにイランに飛んだ外務省の役人の旅費を負担しろ、というのだ。


 自己責任論が、外務省の役人、すなわち国家の側から語られるのは、なぜか。自己責任論を突きつめると、国家の崩壊につながってしまうのだが。
 
 歩行者天国で通り魔に刺されるのは、護身のための武器も持たずに漫然と歩いている方が悪い。年を取ってさまざまな病気に苦しむのは、若い頃からの健康管理がなっていないからだ。国家のせいではない。自己責任だ。自分の身は自分で守るべきだ。護身のための武器どころか、最近では、民間の軍事会社などというものもある。今の自衛隊に不満がある人は、自分で金を出して、自衛隊以上の軍事組織をつくればよい。また、病気についても、金に糸目をつけずに海外の一流医療機関を使えばよい。それだけの金がない人たちは、金持ちの使用人になって、保護を受けながら生きればよい。
 
 ここまでくると、だれも税金や社会保険料など、支払わなくなる。すなわち国家の崩壊だ。かつての戦国時代の再来だが、外務省の役人は、もしかして、今の自分たちのありように潜在的な不満でも持っているのだろうか。