おとなの昔話5


おとなの昔話5 「 ひらけー、○○! 」


 むかーし、むかし。あるところに、ひとりの欲張りな男が住んでいました。男には弟がいましたが、急に羽振りがよくなったので、男は妬ましくてなりません。そこで、弟のあとをつけてみると、町から遠く離れた岩山に着きました。巨大な岩の前で、弟が 「 ひらけー、ゴマ! 」 と叫ぶと、なんとまあ、岩がスッと左右に開いたではありませんか。弟は、ためらうこともなく岩山の中に入ってゆきます。すると、岩が今度は音もなく閉じました。いったい、弟は何をしているのか。男が物陰から様子を見ていると、しばらくして岩が開いて、弟は外に戻ってきました。なんだか、体が重そうです。どうしたのでしょうか。


 男は我慢できず、弟の姿が見えなくなるとすぐに弟の真似をして、岩の前で 「 ひらけー、ゴマ! 」 と叫びました。すると、やはり岩がスッと開きました。男は恐ろしい気持ちもありましたが、好奇心に勝てず、中に入りました。するとそこには、今までに見たことのないような金銀財宝が、山のように積まれていました。弟は、ここから少しずつ金銀を持ち帰っていたのです。男も夢中になって、持てるだけの金銀を服のポケットに詰め込みましたが・・・・・・。


 困ったことが起こりました。岩を開くための呪文を度忘れしてしまったのです。


 「 ひらけー、コメ! ひらけー、ムギ! ひらけー、マメ! 」


 思いつく限りの言葉を試しましたが、だめです。岩は、びくともしません。自分はこのままここで死ぬかもしれない。恐怖にとらえられた男の脳裏に、ある言葉が浮かびました。
 日常生活の中では絶対に口に出してはいけない言葉。でも、こういう非常時なら、許されるかも。いや、むしろこういう非常時のための言葉なのではないか。いやいや、これを口に出したら、神罰が下るかも。
 あれこれ悩んだ末に、とうとう男は、思い切って叫びました。


 「 ひらけー、コーマン! 」


 すると、どうでしょう。岩がスッと開いて、男は無事、町へと戻ることができました。


 ・・・・・・どうして、岩は開いたのか。


 「 コーマン 」 を 「 ゴマ 」 と聞き間違えて、岩が誤作動を起こしたのだろう。もしもストレートに 「 ひらけー、ま○こ! 」 と叫んでいたら、おそらく男は助からなかった。


 この解釈が現在、民俗学者たちの間では通説になっているそうです。


 タマには自主規制も悪くない。これが、この物語から汲み取れる教訓です。どっぴゅんぱらりのぴゅっ。