BLとしての


「 耳なし芳一 」。


 簡単に言ってしまうと、この怪談は芳一と和尚、平家の亡霊による、三角関係の物語なのではないか。芳一は、和尚の稚児だった。そこへ亡霊が介入してくる。和尚は、亡霊に魅入られ、キス・マークだらけになって帰ってくる芳一が許せなかった。彼は、わざと芳一の耳に経文を書かなかった。亡霊の言うことを聞いた耳などなくなってしまえばいい、と思ったのだろう。


 ・・・・・・それにしても、経文を書き込む場面は、やはりこの物語のハイライトだろう。白い肌に黒い経文が浮かび上がるエロチシズム。愛撫するかのような、怪しい筆遣い。それはついに芳一の性器にまで及び、快感を堪えかねた彼の口からは、絶え間のない喘ぎ声が溢れ出す。


 その後の芳一は、どうなったか。目も見えず、耳も聞こえない。外界との接触は、ただ和尚に見つめられ、愛撫されるだけ。そのような肉人形として、朽ち果てていったのではないか。