ある専門紙に


某飲料メーカーの工場における「改善提案」に関する記事が載っていた。


 その工場の従業員は、全員、1ヶ月に1件以上の改善提案を行うという。最近では、製品を出荷する時に使う外箱の小さなキズをなくすことに成功した、とか。


 実に見事だが、彼らが大きなプレッシャーとストレスの下で働いているのは間違いない。仮に従業員が常に500人いるとして、1人が1ヶ月に1件提案すれば、1年で6000件。10年で60000件だ。遅かれ早かれネタ切れになるのは言うまでもない。外箱の小キズなどという、製品の品質とは無関係な事にまで手をつけているのはその兆候だ。


 「いやそうではない、彼らは楽しく働いているのだ」、としたら、全員が1ヶ月に1件以上という数字には、何かウラがあるのだ。リーマン・ショック以来、「数値化はウソつきの始まり」だというのは常識になっている。


 今求められているのは、「もう今までのような改善提案はやめることにしました」、という改善提案だろう。1ヶ月に何件というような具体的な数字とは、いい加減おさらばすべきだ。そうでなければ、今いる従業員も気の毒だが、これから入社する若者たちがもっと悲惨な目にあう。すでに十分以上改善提案が行われて、職場は規則でがんじがらめになっているというのに、さらに自分で自分の首を絞めるよう強制されることになるからだ。