NHKの


ETV特集 永山則夫」を見る。


 感動的な話だが、事件の核心に迫っているとはとても思えない。つまり、どうやって彼はピストルを入手したのか、この番組では全く触れられていない。


 彼は、幼少期の劣悪な栄養状態のせいか、身長160センチの貧弱な体の持ち主だったという。どんなに社会を憎んだとしても、たとえば秋葉原歩行者天国で、無差別に通行人をダガーナイフで襲う、というような事件を起こすことは、彼には不可能だった。ピストルがあればこその連続殺人だったのだ。


 彼が使ったのは、22口径のリボルバー。持ち主に似て、ピストルの中では最も非力なタイプだ。だが彼は、それでも魅入られてしまったのだろう。職場に適応できず、住む場所もない。にも関わらず、自分は「力」を持っている。このようなアンバランスな状態のままでいることに、耐えられなかったのではないか。


 事件後何年も経ってから獄中で学習した、資本主義社会がどうのこうのという理論は、もちろん「後づけ」だ。事件の原因は、もっと原初的、本能的なものだったのではないだろうか。